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ウィメンズヘルスとは

Fumi Horiguchiウィメンズヘルス研究所が目指す Perspectives on Gender and Women's Health – Japan

 ウィメンズヘルスとは何か、メンズヘルスとの関係は何か、なぜこういう言葉が存在するのか日本においてはまだ充分に理解されずにおります。これは従来の女性の疾患の治療や予防などをウィメンズヘルスと考えたり、また男性と女性との身体的相違を比較する性差医療と考えるなど、誤解が生じていることによります。ウィメンズヘルスとはジェンダーや性役割などを含む心理社会的要因を配慮した女性の健康であり、このような要因がどのように女性の健康を障害しているかについて、従来の医学を再評価し、更なる改革を行なうものです。

 では、なぜ女性の健康が必要なのでしょうか。同時になぜ男性の健康は考慮しなくてもよいのでしょうか。ウィメンズヘルスは公衆衛生学、心理学、社会学、心身医学ならびに産婦人科学などを含む医学の知識を統合して新しい見解を示すことにより検証される学際的な領域です。ウィメンズヘルスの研究は、生物学的側面だけから検証されてきた従来の研究方法を見直し、Feminist Researchにより得られたエビデンスによって、一部の不適切な研究方法で得られた過去のデータや判断が間違っていたことを立証していきます。しかし、一般社会においてその普及はこれからであり、それはウィメンズヘルスの専門職の役割でもあります。

 日本の社会におけるウィメンズヘルスの優先項目は、夫の暴力、子育て、不妊治療、月経関連疾患およびメンタルヘルスのみならず、災害や放射能の汚染などの母子の健康に影響するものもあげられます。そしてこれら健康障害の改善にはウィメンズヘルス専門職の参加が期待されております。

 これまで女性の健康は産婦人科、精神科、心身医学、心理学、社会学および公衆衛生学などを駆使して行なわれてきました。今後はとくにエビデンスに基づく疫学的研究も必要です。今、若い女性には子宮がんや性病蔓延の予防への取り組み方に懸念、周産期女性には、出産後の周囲からの孤立無援状態がうつ病の決定因子や危険因子となっていること、中年期女性の夫からの暴力問題、高年期女性の認知症の課題など、女性の生涯の健康の向上には、genderの立場を考慮した研究が必要です。そのため、女性の生涯の健康に携る専門職者は、女性の背後にある心理社会的要因に敏感であること、そしてそれらを含めた支援を行うことで、初めて女性たちを健康に導くことができると考えます。現場においてこのような支援をすることは、何れも時間を要しますが、だからといって出来ないという事は許されません。手術や薬物療法などの基本の治療法に加え、それのみでは改善しない、あるいは適切な治療が進まない女性たちのケアに、今、genderの立場から心理社会的要因を考慮したウィメンズヘルスのパースペクティブが求められています。