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メンタルヘルスと女性の健康

 メンタルヘルスとは精神保健すなわち精神的な健康のことです。心の健康は女性の健康にどのように影響するのでしょうか。

 WHOは1981年にメンタルヘルスを主観的な幸福、精神的機能の能力(認知、情動、人間関係など)その他の要因が促進されるようなやり方で互いに作用する能力であると定義しました。やまいは気からとの諺があるように、人の健康とメンタルヘルスは深い関係があります。

 女性のメンタルヘルスで問題となるのは不安とうつです。また不定愁訴、パニックや過換気症候群などの不安障害や毎月の月経関連の苦痛、育児ノイローゼ、更年期障害などに見られるうつ病などです。

 WHOは単極性うつ病が2020年には女性にとって世界的にも第2の重要な疾患になると警告しています。女性のうつ病は20歳代に増加し、その後幾分減少しますが、更年期に再び増加し、その後、高齢では増加しません。

 女性のうつ病は男性の2倍以上あると言われ、この原因について様々な研究が行われましたが性格、遺伝やホルモンなどにその疑いはあってもはっきりしませんでした。残るは心理・社会的要因で、その質的研究、フェミニストリサーチにより、その関与にエビデンス(確証)が認められました。

 女性は男性に比べ社会的地位も低く、賃金も低く、差別されているので、自尊心も低く、家庭内、学校、職場を問わず、セクシャルハラスメント、ジェンダーに元ずく暴力を受けやすくなっています。その上毎月の月経関連症状、妊娠、出産、育児など身体的にも精神的にも様々な負担を受けています。そしてウエルビーイング(健康で安心、満足に生活できる状態)は著しく低下し、これらが女性の健康を損なっています。

 今マスメデイアにしばしば途場するものに子供や交際相手からの暴力や学校でのいじめなどがあります。時には自殺や殺人にまで及ぶので本当に胸が痛みます。これをどのように防いだら良いのでしょうか。

 Fumi Horiguchiウィメンズヘルス研究所では2014年の設立以来、毎年、東京女子医科大学女性生涯健康相談所やメルボルンのモナシュ大学との協力を得て市民公開講座や研修などを開催してまいりました。うつ病の患者さんの中には子供時代に受けた暴力特に性的暴力、また成人してからパートナーから受けた身体的、精神的暴力などにより、そのストレスからうつ病の罹患が増加しております。女性のうつ病は健康問題にとどまらず、貧困、法律的にも不平等、経済的援助がなく、子供がいれば他人への依存が強まるなど人生の生涯にわたる困難が伴います。

 成人女性のうつ病は婚姻状況及び子供がいるなどがリスク因子となります。子供のために暴力の夫から逃れることはできないと考え、つらい人生を送るのは悲しいことです。本研究所はウィメンズヘルス研究の先駆者であるモナッシュ大学ウィメンズヘルス研究所や日本国内の研究者たちと連携し様々な活動を行っておりますがその一環としてメンタルヘルス上影響の強い子供や女性への暴力防止に力を入れて研究、教育および広報などの活動を行っております。